リアルタイム通信を支える「WebRTC」と「WebSocket」。この2つの技術を使い分けることで、音声・ビデオ通話やチャット、データストリーミングを効率的に実現できます。
本記事では、WebRTCプラットフォームを運営するSkyWayが、WebRTCとWebSocketの違いや仕組み、WebRTCでWebSocketを活用する事例など、徹底解説します。
代表的なWebRTCプラットフォームとして、NTTコミュニケーションズが開発、運営する「SkyWay」があります。 「SkyWay」とは、ビデオ・音声通話をアプリケーションに簡単に実装できる国産SDKです。⇒概要資料をダウンロードする（無料）
WebRTCとは
WebRTC（Web Real-Time Communication）は、Webブラウザやモバイルアプリケーション間で音声、ビデオ、テキスト、ファイルなどのリアルタイム通信を可能にする技術です。直接、P2Pで接続するため、低遅延かつ効率的なデータ転送が特徴です。また、DTLSやSRTPを使った暗号化により、安全な通信が確保されます。WebRTCは、オンライン会議やビデオ通話、ライブ配信、リアルタイムゲームなどに幅広く利用されており、ブラウザ間の通信を簡単に実現するオープン標準として支持されています。
以下の記事にてWebRTCを詳しく解説しているので、ご参考ください。
WebSocketとは
WebSocketは、クライアントとサーバー間でリアルタイムかつ双方向の通信を可能にするプロトコルです。一度接続が確立されると通信は常に維持され、HTTPのように都度リクエストやレスポンスを行う必要がありません。そのため、リアルタイム性を重視するアプリケーションで効率的なデータ伝送が実現します。リアルタイムチャットや通知、オンラインゲーム、データストリーミングといった即時性が求められる分野で広く活用されており、簡潔な設計と幅広いブラウザ対応によって、多くの開発者に支持されています。
WebRTCとWebSocketの違い
WebRTCとWebSocketは、どちらもリアルタイム通信を可能にする技術ですが、用途と設計思想が異なります。WebRTCはクライアント同士でのP2P通信を前提としており、リアルタイム性を出すために再送しません。 一方で、WebSocketはクライアントとサーバー間の双方向通信に特化しており、再送制御・順序保証をする代わりにWebRTCほどのリアルタイム性は重視していない特徴があります。
WebRTCは低遅延とセキュアなメディア通信に優れ、WebSocketはシンプルなテキストやバイナリデータの送受信に適しています。用途やリアルタイム性のニーズによって使い分けられます。
WebRTCの仕組み
WebRTCは、ブラウザやアプリ間でリアルタイム通信を実現するために以下のステップで機能します。
1. シグナリングサーバーへの接続
最初に、2つのブラウザ（通信する相手同士）が通信を開始するために必要な情報を交換します。この情報交換をサポートするのがシグナリングサーバーです。
- ブラウザとシグナリングサーバーが通信を行います。
- 交換する主な内容は、通信条件を記載したSDP（Session Description Protocol）です。
- この段階では、ブラウザ同士の直接通信はまだ行われていません。
2. 経路情報の収集と共有
次に、ブラウザ間でデータの送受信を行う経路を決定するための情報を収集し、交換します。このプロセスはICE（Interactive Connectivity Establishment）によって進められます。
- STUNサーバーを利用して、自身の「外部IPアドレス」と「ポート番号」を確認します。
- NAT（ネットワークアドレス変換）越しに通信を行うために必要な情報です。
- 必要であれば、TURNサーバーを使用します。
- NATやファイアウォールの影響で直接通信が難しい場合に、中継役を担います。
- 収集した経路情報（ICE候補）はSDPに含められ、相手側と共有されます。
3. 接続の試行
ブラウザ間で交換したSDPやICE候補を基に、実際のP2P通信を試みます。
- 複数の経路候補から最適なものを選び、接続の試行を行います。
- STUNサーバーやTURNサーバーを必要に応じて使用し、通信が確立するように調整します。
4. P2P通信の開始
接続が確立した後は、ブラウザ同士で直接通信が行われます。
- 音声や動画、その他のデータをリアルタイムでやり取りできる状態になります。
- この段階ではシグナリングサーバーの役割は終了し、ブラウザ間の直接通信（P2P）が進行します。
この仕組みにより、WebRTCは低遅延でセキュアなリアルタイム通信を可能にします。
WebSocketの仕組み
WebSocketは、クライアントとサーバー間でリアルタイム通信を効率的に行うために設計されたプロトコルです。その仕組みは以下のように動作します。
1.初期接続
- WebSocketはまずHTTPリクエストで接続を開始します。このリクエストには「Upgrade」ヘッダーが含まれ、プロトコルをWebSocketに切り替える要求を行います。
- 例:
Upgrade: websocketヘッダーが指定される。
- 例:
- サーバーがリクエストを承認すると、接続が確立し、HTTPからWebSocketプロトコルに移行します。
2.双方向通信の開始
- 接続が確立されると、クライアントとサーバー間で継続的なデータ通信が可能になります。通信はフルデュプレックス（双方向同時）で行われ、都度接続を再確立する必要がありません。
- WebSocketは効率的なバイナリフレーム形式でデータをやり取りします。これにより、テキストやバイナリデータを効率的に転送できます。
WebSocketはこの仕組みにより、リアルタイム性が求められるチャットや通知、オンラインゲーム、株価やセンサーデータのストリーミングに最適な通信を提供します。
WebRTCとWebSocketの比較表
WebRTCとWebSocketはどちらもリアルタイム通信を実現する技術ですが、用途や設計が異なります。以下の比較表で両者の違いをわかりやすく整理しました。
| 項目 | WebRTC | WebSocket |
|---|---|---|
| 主な用途 | 音声・ビデオ通信、 P2Pファイル共有 |
リアルタイムチャット、通知、 データストリーミング |
| 通信方法 | P2P、必要に応じて サーバ利用 |
クライアントと サーバー間の通信 |
| プロトコル | UDP（低遅延、高速） | TCP（信頼性重視） |
| セキュリティ | DTLS/SRTPによる暗号化 | TLSによる暗号化 |
| リアルタイム性 | 高 （低遅延） |
中 （TCPのオーバーヘッドあり） |
| 実装の複雑さ | 高 （シグナリング やNATトラバーサルが必要） |
低 （簡単なAPIで セットアップ可能） |
| データ転送 | 音声、ビデオ、任意のデータ | テキスト、バイナリデータ |
| 使用例 | Zoom、Google Meet、 ファイル転送 |
Slack、株価通知、 オンラインゲーム |
WebRTCはリアルタイム性やP2P通信を重視したシステムに適しており、WebSocketはクライアントとサーバー間のシンプルなデータ通信に向いています。それぞれの特徴を考慮して用途に応じて選択しましょう。
WebRTCでWebSocketを利用するシーン
WebRTCとWebSocketは組み合わせて利用されることもあり、以下のようなシーンでWebSocketが役立ちます。
シグナリングサーバーへの接続
WebRTCではピア間の接続を確立するために、シグナリング（接続情報の交換）が必要です。WebSocketはリアルタイム性の高い双方向通信に優れており、SDPやICE候補などの接続情報を迅速にやり取りするために使われます。
WebSocketはWebRTCの補助的な役割を果たすことも可能で、P2P通信の準備や運用をスムーズに進めるための重要な技術です。
WebRTCを簡単に実装するには
WebRTCの実装には専門的な知識と多くの開発工数が必要ですが、SDK（Software Development Kit）を活用する方法があります。SDKを利用すれば、サーバーの構築や管理の手間を大幅に削減し、効率的な開発が可能になります。
WebRTC SDK「SkyWay」
WebRTCの代表的なSDKとして、NTTコミュニケーションズが開発、運営する「SkyWay」があります。
「SkyWay」とは、ビデオ・音声通話をアプリケーションに簡単に実装できる国産SDKです。
大きな特徴としては、以下が挙げられます。
- スピーディーな開発ができる：
開発資料が豊富かつ日本語でわかりやすい、国内エンジニアがサポートしてくれる - 信頼性・安全性が高い：
NTTコミュニケーションズが開発、運営する国産SDK。サービス歴は10年以上で、累計導入サービス数も21,000件以上 - 無料で開発スタート：
開発検証用として、Freeプランあり。テスト検証期間中は無料で利用可能。商用サービス提供後も基本利用料11万 + 従量課金制で安心。
WebRTCのSDKとして提供されているものは、海外製が多いため、開発ドキュメントも英語か和訳のもので開発しにくい傾向にあります。 「SkyWay」であれば、NTTグループが開発、運営する安心の国産SDKかつ、国内エンジニアがサポートしてくれるため、開発運用工数も大幅に削減でき、開発のしやすさからもおすすめです。
テスト検証用は無料のため、ぜひアカウント登録をしてみください。
まとめ
WebRTCとWebSocketはリアルタイム通信を実現する技術ですが、用途が異なります。WebRTCはP2P通信に特化し、音声・ビデオ・データの低遅延転送を実現。一方、WebSocketはクライアントとサーバー間の効率的な双方向通信を提供します。両者はシグナリングやフォールバック通信などで組み合わせて使用されることが多く、リアルタイム性や通信の信頼性を目的に選択されます。それぞれの特性を理解し、適切な用途に応じて活用しましょう。WebRTCの実装には専門知識や多大な開発工数が求められますが、「SkyWay」を活用することで、開発を大幅に効率化できるのためおすすめです。
