グラフの読み取り方
このページでは、通信詳細画面における各種グラフの読み取り方について説明します。
ネットワーク情報
ジッター
ジッターとは、パケットの伝送時間の揺らぎ、振れ幅を表します。ネットワークが混雑すると大きくなり、映像・音声の遅延や欠損が起きやすくなります。
一般的に、ジッターは10ms未満が正常とされています。
WebRTCは自動で画質やフレームレートを下げることでネットワークの詰まりを解消するように動作するため、ジッターが10msを超えた場合、数秒程度で回復します。
回復しなかった場合、 利用しているルータやネットワーク回線の過負荷・不具合(後述) が予想されます。
ジッターバッファー遅延
ジッターバッファー遅延は、ジッターが高い場合に発生し、映像・音声の遅延が起きやすくなっていることを示します。また、乱高下するような状況では映像や音声の途切れが目立つ可能性が高いとされています。
WebRTCは自動で画質やフレームレートを下げることでジッターが10ms未満に回復するように動作するため、ジッターバッファー遅延もそれに伴い回復します。
回復しなかった場合、 利用しているルータやネットワーク回線の負荷・不具合(後述) が予想されます。
パケットロス率
パケットロス率は、publisherから送信されたパケットのうち、subscriberが受信するまでの間に欠損した割合を示します。
一般的に、パケットロス率が20%を超えると映像・音声の途切れが目立ち、50%を超えると通話が困難になるとされています。
パケットロス率が10%を超えると、WebRTCは自動で画質やフレームレートを下げてパケットロス率の回復を試みます。多くの場合、数秒程度でパケットロス率は10%未満に回復します。
回復しなかった場合、 利用しているルータやネットワーク回線の過負荷・不具合(後述) が予想されます。
ビットレート
ビットレートは、映像・音声・データ通信の、1秒あたりに受信したデータ量です。
映像・音声の場合は、データ量が大きければ大きいほど、高い品質であることを示します。データ通信の場合は、データ量が大きければ大きいほど、多くのデータ通信が行われたことを示します
- 音声の場合、ビットレートは一般的に32kbps前後であり、32kbpsより低い場合には、音声の途切れや品質の低下を感じる可能性があります。
- 映像の場合、ビットレートはネットワーク品質に応じて200kbps~1Mbps前後となり、200kbpsより低い場合には画質やフレームレートの低下が目立つ可能性があります。
- データ通信の場合、ビットレートは受信するデータに応じて変化します。データ通信で多くのデータを送受信(publish、subscribe)してしまうと、映像・音声で利用できる通信帯域幅が減り、映像・音声の品質が低下する可能性があります。
受信した音声・映像のビットレートが低い場合、 利用しているルータやネットワーク回線の過負荷・不具合(後述) が予想されます。
往復遅延時間(RTT)
往復遅延時間(RTT)はRoundTripTimeの略であり、パケットがpublisherとsubscriberの間を往復するのに要した時間を示します。
一般的に、RTTが300ms以上の場合、ほとんどのユーザーが遅延を感じ、通話が困難になると言われています。
RTTが高い場合、主に 通信相手との物理的な距離が離れている(後述) ことが予想されます。
メディア情報
音量レベル(音声のみ)
音量レベルは、送信・受信した音声の大きさを示します。
送信側の音量レベルが0の場合、複数の原因が考えられます。
- マイクがミュート状態になっている
- 別のマイクを選択している
- マイクが故障している
マイクがミュート状態になっていないか、マイクの選択が適切か、マイクが故障していないかを確認する必要があります。
フレームレート(映像のみ)
フレームレートは、送信・受信した映像の滑らかさを示します。
WebRTCは幅広いフレームレートをサポートしており、ネットワーク品質に応じて自動でフレームレートを調整します。
一般的に、カメラ映像の場合は15~30fps、画面共有の場合は5~10fpsになります。
これらの数値より低い場合には、映像の途切れが目立つようになります。
フレームレートが低い場合、 利用しているルータやネットワーク回線の過負荷・不具合(後述) が予想されます。
解像度(映像のみ)
解像度は、送信・受信した映像の鮮明さを示します。
WebRTCは幅広い解像度をサポートしており、ネットワーク品質に応じて自動で解像度を調整します。
映像の体感品質は、解像度だけではなく描画サイズも影響するため、解像度のみで品質を評価することは困難です。しかし、320x240(QVGA)よりも小さい画質の場合は、ボヤけて見える可能性が高くなります。
品質が低いと感じる場合には、 利用しているルータやネットワーク回線の過負荷・不具合(後述) が予想されます。
1秒間のうちエンコード/デコードに要した時間(映像のみ)
この項目は、映像を圧縮(エンコード)・復元(デコード)するのに要した時間を示します。
一般的に、1000msを超える値の場合は、デバイス負荷が高まっており、映像の送信や描画がリアルタイムに行えなくなっていることを示します。
1000msを超える場合は、 デバイスの過負荷(後述) が予想されます。
また、デバイスによってはハードウェアアクセラレーションがサポートされている場合もあり、この場合は専用のチップにエンコード・デコード処理を任せることで、デバイス負荷を軽減できます。ハードウェアアクセラレーションが有効になっているかは、通信詳細画面において、「 Publication / Subscription の状態 」で確認できます。
各種グラフ共通
Disabled状態
各種グラフにおいて、Publicationが Disabled
状態になっている時間帯は、灰色の領域で表現されます。
Disabled
状態は、Publicationが映像や音声の送信を停止している状態を示します。
例えば下記のような状態はDisabled
状態とは異なるためご注意ください。
- マイクの物理的なミュートボタン等によるハードウェアミュートの状態
- MediaStreamTrack の
enabled
プロパティがfalse
の状態
通話不具合に対する対処法
通話不具合のケースに応じた、対処法の例を説明します。
利用しているルータやネットワーク回線の過負荷・不具合が予想されるケース
- 有線LAN接続の利用(例: Wi-Fiから有線LAN接続への変更)
- デバイスからWi-Fiルータへの距離が遠い場合に、有線LAN接続へ切り替えることで、ジッターの減少、パケットロスの減少、RTTの低下により、より安定した通話が行える可能性があります。
- 多くのデータを送受信(publish、subscribe)しないようにアプリケーションを修正する
- 不要な映像・音声・データ通信を送受信(publish、subscribe)しないようにアプリケーションを修正することで、映像や音声一つ一つに利用できる通信帯域幅が増え、より高品質な通話が行える可能性があります。
- ルーター・モデムの再起動
- ルータ・モデムの不調が解消する可能性があります
- 通信端末で動作している不要なアプリケーションの停止
- データ通信量が削減され、WebRTCで利用できる通信帯域幅が増え、より高品質な通話が行える可能性があります。
- 同一ルーターに接続する他の端末の通信を停止する
- データ通信量が削減され、WebRTCで利用できる通信帯域幅が増え、より高品質な通話が行える可能性があります。
- ネットワーク回線の変更(例:テザリングの利用)
- 混雑しているネットワーク回線を利用しないことで、ジッター、パケットロス率、RTTなどの品質が改善し、より安定した通話が行える可能性があります。
- テザリングを利用する場合、WebRTCでは大量のデータ通信を行うため、速度制限や追加料金にご注意ください。
- 混雑しているネットワーク回線を利用しないことで、ジッター、パケットロス率、RTTなどの品質が改善し、より安定した通話が行える可能性があります。
通信相手との物理的な距離が離れていることが予想されるケース
以下の対処によって、問題が解消する可能性があります。
- ネットワーク回線の変更(例:テザリングの利用)
- 経由するネットワーク機器の数が減り、RTTの高まりを解消でき、より遅延の少ない通話が行える可能性があります。
- テザリングを利用する場合、WebRTCでは大量のデータ通信を行うため、速度制限や追加料金にご注意ください。
通信端末の過負荷が予想されるケース
以下の対処によって、問題が解消する可能性があります。
- 送信・描画する映像や音声の数の削減
- エンコード・デコード処理の数を減らすことで、通信端末のCPU負荷が削減され、より安定した通話が行える可能性があります。
- バックグラウンドで動作しているアプリケーションの停止
- 動作中のアプリケーションを停止することで、通信端末のCPU負荷が削減され、より安定した通話が行える可能性があります。