遠隔操作ロボットは、私たちの生活やビジネスに革命をもたらす可能性を秘めています。手の届かない場所での作業や、危険を伴うタスクの実行、さらには日常生活のサポートまで、その用途は多岐にわたります。最近の技術進化により、より自然で直感的な操作が可能となり、医療、工場、農業など幅広い分野での利用が急増しています。
この記事では、通信エンジンプラットフォームのSkyWayが、遠隔操作ロボットの基本から市場動向、具体的な活用実例を業種別にご紹介!さらに主要メーカーまでを詳しく解説します。
- 遠隔操作ロボットとは
- 遠隔操作ロボットの市場規模
- 社会的な課題を解決!遠隔操作ロボットの実例
- 遠隔操作ロボットの通信技術にはWebRTCを活用
- 遠隔操作ロボット その他の主なメーカー
- 遠隔操作ロボットの論文
- まとめ
代表的な通信エンジン・ビデオ通話プラットフォームとして、NTTコミュニケーションズが開発、運営する「SkyWay」があります。 「SkyWay」とは、ビデオ・音声通話をアプリケーションに簡単に実装できる国産の開発ツールです。⇒概要資料をダウンロードする(無料)
遠隔操作ロボットとは
遠隔操作ロボットは、離れた場所から人間が操作することができるロボットであり、さまざまな業界で活用されています。これらのロボットは、インターネットや専用の通信システムを通じて操作され、現場に直接行くことなく作業を実行します。特に、危険な環境やアクセスが難しい場所での作業において、安全性と効率性を大幅に向上させるツールとして注目されています。また、最近では、感覚フィードバックやリアルタイムの制御技術が進化し、より自然で直感的な操作が可能になっています。
遠隔操作ロボットの市場規模
遠隔操作ロボットの市場は急速に成長しています。YH Research株式会社の調査レポート(※1)によると、2023年までに世界市場規模は約3.12億米ドル(約437億円)に達し、2018年から2023年の年平均成長率は16.5% と予測されています。この成長は、技術の進化や通信インフラの整備により、さまざまな産業での活用が広がっているためです。特に、高齢者支援や災害対応など、人手が不足する現場での需要が増加しています。
※1…YH Research株式会社の調査レポートは「グローバル遠隔操作のEODロボットのトップ会社の市場シェアおよびランキング 2024」を参照
社会的な課題を解決!遠隔操作ロボットの実例
工場・製造・建設での遠隔操作ロボットの事例
遠隔操作ロボットは、工場・製造・建設現場での人手不足の解消、コスト削減、安全性の向上に効果的です。いくつか実例をご紹介します。
リモートロボティクスの「リモートロボットプラットフォーム」
リモートロボティクス株式会社の「リモートロボットプラットフォーム」が、自宅から工場のロボットを操作することを可能にしました。このプラットフォームは、川崎重工とソニーグループの共同出資によって設立されたリモートロボティクス株式会社が提供しており、遠隔地からの操作を支援するための操作画面やアプリケーションのUI、ワークフロー設定などを含んでいます。
具体的な事例として、川崎重工グループのアーステクニカ八千代工場において、大型金属部品の研削や研磨の作業を遠隔地から公衆回線を通じて正確に行うことが実証されています。また、リサイクル用ビン選別システムでも、遠隔地からの正確な操作が可能となっています。
※詳細については公式サイト「 リモートロボティクス株式会社(公式サイト)」をご参照ください。
沖電気工業の「AIエッジロボット」
沖電気工業株式会社はAIエッジコンピュータを搭載した「AIエッジロボット」を開発し、リアルタイムで現場の状況を判断できる技術を進めています。例えば、ある自動車部品工場では、このロボットが24時間体制で工場内を巡回し、異常な音や温度変化を検知して即座に管理センターに報告することで、早期対応を可能にし、生産ラインの安定稼働を支援しています。また、感染症対策として、無人での消毒作業も行い、安全で清潔な環境を維持しています。
※詳細については公式サイト「AIエッジロボット|沖電気工業株式会社」をご参照ください。
ugoの「ugo R」ロボット
ugo株式会社が開発した「ugo R」ロボットは、アームを用いて軽作業や見回りを実施し、コミュニケーションや警備機能を提供します。このロボットは、施設内の定期巡回や異常検知を効率的に行い、少ない人員でも安全性を高めることができます。これにより、防犯や見守りの労力を大幅に削減し、人手不足の課題を解決しています。
※詳細については公式サイト「ugo R|ugo株式会社」をご参照ください。
NTTコミュニケーションズの「AVATANK」
AVATANKは、NTTコミュニケーションズが開発したテレプレゼンスロボットで、リアルタイムで遠隔操作が可能です。このロボットは主にデータセンターでの使用を想定しており、映像転送用カメラを一眼レフカメラに変更することで、画質の向上やフォーカス機能の追加などが施されています。現在、ロボットベンダーと協力して、PL法などの法的要件を満たし、お客様に提供できるレベルのロボットを開発しています。
※詳細については「『リアルタイム遠隔操作』の壁を越える。“ロボットと人との共生”に不可欠なイノベーションとは」をご参照ください。
医療分野での遠隔操作ロボットの事例
医療分野では、遠隔操作ロボットが人手不足の解消、手術の成功率向上に大きく貢献しています。実例をいくつかご紹介します。
川崎重工業の「hinotori」手術ロボット
川崎重工業株式会社の「hinotori」手術ロボットは、熟練医師が遠隔から手術を行うことを可能にし、医療現場の負担を軽減しています。このロボットは、高精度な操作が可能で、手術の成功率を向上させるとともに、地方や離島などの医師不足地域でも高度な医療サービスを提供できます。これにより、医療現場の効率化と患者への迅速な対応が実現されています。
※詳細については「患者と医師を支えるテクノロジー。手術支援ロボットが起こす革命|川崎重工業株式会社」をご参照ください。
農業分野での遠隔操作ロボットの事例
農業分野でも遠隔操作ロボットは労働力不足解消、作業効率の向上に役立っています。実例をいくつかご紹介します。
スマートロボティクスの「テレワークロボット™」
株式会社スマートロボティクスの「テレワークロボット™」は、遠隔地から農作業を行うことが可能です。このロボットは、遠隔操作で収穫や農薬散布を行い、作業効率を大幅に向上させます。特に、高齢化が進む農村地域での労働力不足を補う手段として期待されており、重労働を軽減しながら農作物の品質を保つことができます。これにより、農業の持続可能性が向上し、生産性の向上が図られています。
※詳細については公式サイト「テレワークロボット™|株式会社スマートロボティクス」をご参照ください。
H2Lの「RaraaS」(遠隔農業ロボットサービス)
H2L株式会社が開発した「RaraaS」(遠隔農業ロボットサービス)があり、スマートフォンを通じて遠隔地のロボットを操作し、農業に参加することができます。このサービスは障がい者や外出が困難な人でも農業に参加できるように設計されています。
※詳細については公式サイト「RaraaS|H2L株式会社」をご参照ください。
物流・交通分野での遠隔操作ロボットの事例
遠隔操作ロボットは、物流や交通の分野においてもコスト削減や作業効率の向上に貢献しています。いくつかの具体例をご紹介します。
東海電子の「e点呼セルフ Typeロボケビー」
遠隔操作ロボットは、遠隔点呼によるコスト削減にも貢献しています。例えば、物流業界で使用されるロボットは、運転手の出発前点呼を遠隔で実施することで、人員配置の効率化とコスト削減を実現します。
東海電子株式会社が提供する「e点呼セルフ Typeロボケビー」は、対面点呼と同等の効果を持つ自動点呼システムです。この機器は運行管理者の業務を代行し、簡単な操作で点呼を実施できます。顔認証やアルコール検知機能を備え、異常が発生した場合には管理者に通知する機能も搭載されています。
※詳細については公式サイト「e点呼セルフ Typeロボケビー|東海電子株式会社」をご参照ください。
NTTコミュニケーションズの「RobiCo™」
「RobiCo™」は、NTTコミュニケーションズが提供する自動走行ロボット管制サービスで、特に屋外や公道でのロボット活用を支援するために開発されました。このサービスは、ロボットの運用業務をアウトソースできるもので、導入企業がロボットの運用に必要な人材確保や育成などの負担を軽減できるように設計されています。
※詳細については「屋外・公道での自動走行ロボット活用のお困りごとを解決する「自動走行ロボット管制サービス『RobiCo™』」の提供を開始|NTTコミュニケーションズ」「NTT ComとNTT都市開発、広島市内の公園および公道にて自動走行ロボット活用の実証実験を実施|NTTコミュニケーションズ」をご参照ください。
災害時の遠隔操作ロボット活用例
遠隔操作ロボットは、災害時の救助活動においても安全性と効率性の向上に寄与しています。具体的な事例をご紹介します。
東北大学の「Quince」ロボット
東北大学が開発した「Quince」ロボットは、東日本大震災の際に、放射能汚染区域でのデータ収集と安全確認を行いました。このロボットは、危険な環境下でも遠隔操作で精密な作業を実施でき、救助活動の安全性と効率性を大幅に向上させます。これにより、人命救助や被害状況の迅速な把握が可能となり、災害対応の効果を高めています。
※詳細については公式サイト「 災害対応ロボットQuince|TadoLab - Tohoku University」をご参照ください。
遠隔操作ロボットの通信技術にはWebRTCを活用
多くの遠隔操作ロボットの通信技術には、リアルタイム性と高信頼性を確保するためにWebRTC(Web Real-Time Communication)が活用されています。WebRTCは、ブラウザ間で直接データをやり取りする技術であり、低遅延かつ高品質な音声や映像の伝送が可能です。これにより、ロボットの遠隔操作においてもスムーズな操作体験が実現します。
※WebRTCについて詳しくは以下をご参考ください。
例えば、ugoの「ugo R」やNTTコミュニケーションズの「AVATANK」では、遠隔操作ロボットの通信エンジンにWebRTCプラットフォーム「SkyWay」が活用されています。
「SkyWay」とは、ビデオ・音声通話をアプリケーションに簡単に実装できる国産SDKです。
大きな特徴としては、以下が挙げられます。
- スピーディーな開発ができる:
開発資料が豊富かつ日本語でわかりやすい、国内エンジニアがサポートしてくれる - 信頼性・安全性が高い:
NTTコミュニケーションズが開発、運営する国産SDK。サービス歴は10年以上で、累計導入サービス数も21,000件以上。遠隔操作ロボットの導入実績も多数 - 無料で開発スタート:
開発検証用として、Freeプランあり。テスト検証期間中は無料で利用可能。商用サービス提供後も基本利用料11万 + 従量課金制で安心。
WebRTCのSDKとして提供されているものは、海外製が多いため、開発ドキュメントも英語か和訳のもので開発しにくい傾向にあります。 「SkyWay」であれば、NTTグループが開発、運営する安心の国産SDKかつ、国内エンジニアがサポートしてくれるため、開発運用工数も大幅に削減でき、開発のしやすさからもおすすめです。
テスト検証用は無料のため、ぜひアカウント登録をしてみください。
遠隔操作ロボット その他の主なメーカー
遠隔操作ロボットの主なメーカーには、以下の企業があります。
- 川崎重工業
- デンソー
- インディ・アソシエイツ
- オリィ研究所
- アスラテック
- 三菱電機
- 東京ロボティクス
各企業の代表的な遠隔操作ロボットをご紹介します。
川崎重工業の「Successor」
川崎重工業株式会社の「Successor」は、熟練技術者の動きを再現し技能を伝承する最新ロボットシステムです。専用操作装置を用いて人間がロボットアームを遠隔操作し、ロボットが微細な感覚を学習して動きを再現します。例えば、自動車のシート取り付けなど、毎回状況が異なり判断が求められる作業でも「コツ」を学び、正確な作業方法を習得可能です。これにより、熟練技術の伝承が実現し、非量産分野やプログラミングが難しい作業にも対応できます。高齢化社会における技術者減少の課題に対処し、製造業の持続可能な発展に寄与することが期待されています。
※詳細については公式サイト「 熟練技術者の動きを再現し、技能を伝承する新ロボットシステム『Successor』|川崎重工業株式会社」をご参照ください。
デンソーの「COBOTTA」
株式会社デンソーウェーブの「COBOTTA」は、人と協働する産業用ロボットで、小規模作業の自動化に最適です。特徴として、優しいデザイン、持ち運びやすいサイズ、専門知識不要の簡単操作があります。COBOTTAは、工場での部品仕分け、医薬品研究の繰り返し作業、教育のプログラミング授業などで活躍します。安全性も高く、速度とトルクを監視するセンサーを内蔵。さらに、制御用APIを公開しており、自由な開発環境でオリジナルアプリケーションの開発が可能です。
※詳細については公式サイト「COBOTTA|株式会社デンソーウェーブ」をご参照ください。
インディ・アソシエイツの「MORK」
インディ・アソシエイツの「MORK」は、遠隔操作が可能なロボットで、テレワークやリモート顧客対応に使用されます。インターネットを介して操作され、感染予防の非接触案内や細やかなコミュニケーションを提供します。MORKには、卓上型のミニモークや飛行機モチーフのMORK 110など、3つのモデルがあります。これらのロボットは、新しい就労スタイルを提案し、社会参加の一つの形として活用されています。
※詳細については公式サイト「 MORK|株式会社インディ・アソシエイツ」をご参照ください。
オリィ研究所の「Orihime」
株式会社オリィ研究所のOrihimeは、その場にいるかのようなコミュニケーションを実現するために設計された遠隔操作ロボットです。操作者はカメラやマイクを通じてリアルタイムで映像や音を体験し、スピーカーを通じて声を伝えることができます。これにより、移動の制約を克服し、社会参加の新たな可能性を提供します。初心者にも直感的に操作でき、使いやすいのが特徴です。
※詳細については公式サイト「Orihime|株式会社オリィ研究所」をご参照ください。
アスラテックの「VRcon for Pepper」
アスラテック株式会社の「VRcon for Pepper」は、インターネットを介してPepperを遠隔操作するシステムです。これにより、Pepperの動作設定が簡単になり、リアルタイムで顧客対応が可能になります。特に、Pepperが対応できない問い合わせにもオペレーターが直接対応できる点が特徴です。スマートフォン、タブレット、PCなどから操作でき、WebRTC技術を利用した双方向通信を実現します。接客や受付などでのPepperの活用を拡大し、初心者でも直感的に操作可能です。
※詳細については公式サイト「ロボット遠隔操作システム『VRcon for Pepper』|アスラテック株式会社」をご参照ください。
三菱電機の「VISUAL HAPTICS」
三菱電機株式会社の「VISUAL HAPTICS」は、遠隔操作ロボット向けの革新的技術で、力触覚情報を視覚情報に変換して表示することができます。この技術により、オペレーターは専用インターフェースを使用せずに、画面上の色の濃淡を通じて物体にかかる圧力を直感的に理解できます。これにより、遠隔操作での作業効率が向上し、遠隔操作ロボットの応用範囲が広がることが期待されています。初心者でも操作が簡単で、学習しやすく、多様な分野での活用が見込まれます。
※詳細については「人の認知特性を活用した進化型遠隔操作サービスプラットフォーム|三菱電機株式会社」「NTTと三菱電機、ネットワーク・サーバ連携制御技術による遠隔ロボット操作を実証~力触覚情報の視覚情報への変換によりシンプルなデバイス構成が可能に~」をご参照ください。
東京ロボティクスの「Torobo」
東京ロボティクス株式会社の「Torobo」は、人間と同等のサイズと力を持つ全身人型ロボットで、多様な作業に対応する関節構成が特徴です。特に、力制御が可能な次世代双腕ロボットの応用研究や機械学習の研究に活用されています。Toroboは身長1660mm、リーチ680mm、片腕の可搬重量8kgを持ち、多関節構成により複雑な作業をこなします。力加減を調整するセンサーと動きを制御する技術で安全かつ巧みな作業ができ、初心者でも扱いやすいです。組立作業や料理、人との自然な交流にも対応できます。
※詳細については公式サイト「人型ロボット Torobo|東京ロボティクス株式会社」をご参照ください。
これらのメーカーは、それぞれの強みを活かし、多様なニーズに応えるロボットを提供しています。
遠隔操作ロボットの論文
遠隔操作ロボットに関する論文は、技術の進化や実用化のための重要な知見を提供しています。遠隔操作ロボットの開発や実装に役立つ、最新の論文を4つピックアップしてご紹介します。
論文タイトル | 概要 | 論文URL |
---|---|---|
Proposal and Evaluation of Visual Haptics for Manipulation of Remote Machine System |
三菱電機が開発した「VISUAL HAPTICS」に関する論文。 視覚的な力触覚の情報伝達を通じて、オペレーターの負担を軽減し、 直感的な操作を可能にする手法を提案。 |
詳細はこちらをご参照ください |
Comparison of Three Feedback Modalities for Haptics Sensation in Remote Machine Manipulation |
遠隔操作における触覚フィードバックの異なる モダリティ(視覚、聴覚、触覚)を比較し、最適なフィードバック方法を探求。 |
詳細はこちらをご参照ください |
遠隔操作と自律操作を適応的に切り替える 半自律テレプレゼンスロボットアーキテクチャ |
遠隔操作者の意図に合わない自律操作によるフラストレーションを回避するため、 遠隔と自律操作を適応的に切り替える新しいアーキテクチャ「One Minder」を提案。 ABAMモデルを使用して、タスクに依存しない切り替えを実現。 |
詳細はこちらをご参照ください |
遠隔操縦建設ロボットのためのドローンを用いた 回り込み移動視点提示による視覚補助 |
建設ロボットの遠隔操作を支援するため、ドローンを用いた 視覚補助システムを開発。ドローンが建設ロボットの側面や前面から 作業エリアの映像を撮影し、操作者が視点を切り替えることができる。 |
詳細はこちらをご参照ください |
これらの論文は、遠隔操作ロボットの技術進化と応用範囲の拡大を明らかにしており、今後の研究開発の方向性を示唆しています。上述のような最新の研究成果に基づいて、さらなる技術革新が期待されます。
まとめ
遠隔操作ロボットは、人間が遠隔から操作するロボットで、危険環境やアクセス困難な場所での作業を安全かつ効率的に行えます。市場規模は急速に成長し、2023年には約3.12億ドルに達しました。工場や医療、農業、物流など様々な分野で活用されており、具体的な事例にはリモートロボティクスのプラットフォームや川崎重工業の手術ロボット「hinotori」などがあります。通信技術にはWebRTCが使用され、リアルタイムで高品質な操作が可能です。遠隔操作ロボットを開発する際にWebRTCプラットフォームを活用するなら、SkyWayがおすすめです。